お風呂の栓
家の近くに大きなメタセコイヤの木がある保育園があった。
私は違う幼稚園に通っていたけれど、その保育園に通う同い年のりゅーちゃんを水曜日にうちで預かっていた。
お母さんと一緒にりゅーちゃんを迎えに行って、晩ごはんを食べて、お風呂に入って、りゅーちゃんのお母さんのお迎えを待つ。
二人でお風呂に入ったあとに、りゅーちゃんがお風呂の栓を抜いた。
私は、「お父さんがこれからお風呂に入るから抜いちゃだめ!」とりゅーちゃんにきつく咎める口調で言った。
我が家は翌日の洗濯にお風呂の水を再利用していたから、自分でお風呂の栓を抜いたことがなく驚いた。
りゅーちゃんは、
「だって、ぼくにはお父さんがいないもん」
と言った。
私は小さくて母子家庭の存在もよく知らずに、お父さんがいないことに驚いた。
りゅーちゃんの顔をみて、なんか良くないことを言ってしまった感じと、お風呂の栓が抜けてしまった感じが重なって、
未だにお風呂の栓を抜くときにたまに思い出す。